9月の星空を撮る







2023年 中秋の名月


400mm、ISO200、f11、1/250秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、三脚使用、大垣市
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2023年9月29日19時26分










ソフトピアジャパン・センタービルに昇る -中秋の名月-


2023年は中秋の名月と満月が重なった
快晴の空に満月が浮かんだ

ソニーストア名古屋で写真展を開催中なので、遠出はできず
久し振りにソフトピアで撮ってはみたものの、周囲はピルと住宅地に囲まれて様相は一変していた


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121mm、ISO1600、f8、1/25秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、三脚使用、大垣市
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2023年9月29日21時14分








木星とガリレオ衛星


中秋の名月の晩、月が高く昇るまで近くの公園でコンビニのパンをかじる
この日は快晴で、東の低空まで晴れ渡っていた

めずらしいこともあるものだと、東の空を見ると蜘蛛の巣のような送電線の隙間から木星が明るく輝いている
これだけ晴れているのならガリレオ衛星も写るかな、と三脚にカメラを据えて木星を撮る
エウロパは木星に接近していて識別が難しいながら、4衛星とも確認することができる

中秋の名月に彩りを添える木星とガリレオ衛星の夜だった

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102mm、ISO3200、f4.5、1/2秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、三脚使用、上の写真はトリミング、大垣市
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2023年9月29日20時21分








サイトロンジャパン 「スターエンハンサー」フィルターをテストする





↑ フィルターを使用しないで撮影した画像


ISO800、f2.8、15秒、マニュアルWB(3900K)、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影

街明かりの光害が激しい所で撮影。ヒストグラムでは全体として左から4分の1の所にピークが来ているが、色温度を3900Kとしているため、R、Gに比べてBが右へはみ出していることがわかる







↑ サイトロンジャパン「スターエンハンサー」フィルターを使用して撮影した画像


ISO800、f2.8、20秒、マニュアルWB(3900K)、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影

サイトロンジャパンのスターエンハンサーは同社HPによると「吸収タイプの光害カットフィルターの表面に、僅かなソフト効果を得られる特殊処理を施した新製品。1枚で光害カットとソフト表現の二つの機能を1枚のフィルターで得ることが可能」としている。ソフト効果は極めて弱いため星景写真での地上風景への影響が抑えられている。製造は新潟県胎内市の胎内工場

サイトロンジャパンからテクニカルデータシートが公表されていないようなのて、以下の初見は撮影データの検討に依る
まずノンフィルターの画像データと比較して1/4段ほど減光が見られた。そのためノンフィルターでは15秒露光としているものを、スターエンハンサー使用時には20秒露光としている
上の画像のヒストグラムを比較すると、フィルターありの画像は+1/4段の露出補正しているため、RGBのうちBはほとんど変化がない。つまり光害の成分のうちRとGがよく押さえられているということができる。Bがノンフィルターの場合とそれほど変わらないので、全体としては青みがかった画像となっている

この結果からすると、
1、スターエンハンサー・フィルター使用時は+1/4段程度の露出補正が必要であること
2、バックグラウンドをニュートラルグレーにするためには、色温度が3900Kでは低すぎるので、5000~5200Kでの使用が望ましいこと

以上の2点が考えられる

ケンコーからも同様のスターリーナイトプロソフトンが発売されている。機会があれば比較検討したいと思う

                                              (9月12日掲載)












オリオン座の三つ星と小三つ星


珍しく深夜から明け方にかけて晴れる予報に1時過ぎに家を出た。1時間ほど車を走らせて、西村彗星撮影地点へ向かうと今夜は雲は出ていない。こんなこともあるのだと、赤道儀をセットする
極軸は北極星に加えてこぐま座のデルタ星、ケフェウス座の51番星がきれいに望める。久し振りに3星で極望がセットできる

西村彗星が地平線から昇ってくるにはまだ間がある。南天を見上げるとオリオン座が姿を見せている。望遠レンズをセットしているので、そのままオリオン座の三つ星と小三つ星に焦点を定める
三つ星は東側から(左側から)順にアルニタク、アルニラム、ミンタカと並ぶ、いずれも2等星。巨人オリオンのベルトの部分に相当し、天の赤道が通っていて、冬の星空では最も移動量が大きい

空気の透明度は良くないが、スターエンハンサーフィルターを使用しているおかげで、光害はかなりカットされている。これについては後日掲載の予定であるので参照されたい。なお上の写真からはアルニタクのすぐ上に接するようにある燃木星雲も見える。また小三つ星の中央にあるオリオン大星雲M42もよく分かる。Hα領域が発する赤い光がこれだけ写っているのは意外だった。さすがにこの光害の中ではバーナードループまでは望むべくもない

なお上の画像は、西村彗星の撮影終了直後にダークフレームを取得し、後処理としてダーク減算後にレベル調整を行いバックグラウンドをニュートラルグレーにした上でレタッチを施している


 ※※※※ 三つ星のお話 ※※※※

オリオン座の三つ星は日本では古くから「からすきぼし」と呼ばれた。慶長二(1597)年の『易林本節用集』に「参(シン) 犂(カラスキ) 星(ボシ)」とあるのが記録としては最も古い。「からすき」は農具で平安時代中期の『和名類聚抄』には「農耕具、犂、墾田器也、加良須岐」とある
日本では「からすきぼし」は三つ星の異名となっているが、三つ星だけでは柄のついたスキにはならない
これについて野尻抱影氏は「この疑問は、昭和10年の春に初めて解けた」と記す。「紀州道成寺に近い農村でいう〈からすきぼし〉は、三つ星だけの名ではなく、それと附近の星とを結んで、曲がった柄のスキの形を見ていることを知った」(野尻抱影『日本星名辞典1973年』としている
さて上の写真からカラスキが目に浮かぶだろうか

                                              (9月11日掲載)


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180mm、ISO800、f2.8、100秒(20秒×5)、マニュアルWB、Raw、サイトロンジャパン・スターエンハンサー使用
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、池田山山麓
SONY α7RM5 + TAMRON 70-180mm F2.8

2023年9月07日02時36分







西村彗星(C/2023 P1)













暁の西村彗星(C/2023 P1)


台風接近の報に西村彗星の観察・撮影を諦めかけていた。台風と列島との位置関係を考えて予想天気図を見ると、6日深夜から7日早朝は北寄りの風が吹くらしい。熱波を押し払う、秋を思わせる済んだ空気が期待できるかもしれない

さて西村彗星は順調に増光し透明度の高い夜空であれば尾もしっかりと見せているらしい。街明かりが酷くて標高の低いここからはどうだろうか。せめてあとひと晩だけでももって欲しい、と念じながら車から機材を下ろす。BUMP OF CHICKEN の「天体観測」が頭の中をぐるぐると駆け巡るのはいつものことだが、大げさな荷物を背負わず車から下ろすだけというのはちょっと楽をしすぎかな

西村彗星を観察し始めたころはふたご座の直下に彗星はあったが、プレセペ星団を追い抜いて、金星の高度よりも低いところにある。それだけ太陽に近づいているということで、撮影できる時間も短くなっていくのはやむを得ないが、その代わりに彗星の尾(
Comet tailはより明るく、はっきりと見えるようになるはず、と期待は高まる。もっともこれだけ光害が酷いとダストテイルとイオンテイルを識別することは難しいだろう

金星の位置を目安に画角に導入すると、いきなりモニターに彗星が飛び込んできた。地平下にある太陽から一直線に長く尾を引いている。低空で光害が酷いので肉眼ではすぐには識別できなかったが、眼下の街明かりが眼に入らないように手で覆って眼を順応させると長い尾も目視で確認できるようになった。これだけ長いと400mmのような長い望遠レンズでは彗星核と尾を共に写野に収めるのは苦労する。のんびりとセットする余裕もないので、レンズの焦点距離を180mmにとどめると写野の下端に山並みも入った

ステラナビゲーターによると撮影時の西村彗星の光度は5.3等、高度は 3.792゚
西村彗星のすぐ下にある恒星はしし座の恒星、ヒッパルコスの全天星図HIP47908。光度は2.97等で肉眼でも赤く輝いていることがわかる

西村彗星は日に日に高度を下げ、やがて夕方の西の空に姿を現すようになるが、西の超低空で日没後の明るさが残るため再会は難しいだろう
とにもかくも5晩徹夜した。短時間露光を連続したのでスタック処理もできる。ただし地上の風景は諦めることになるので、どこに焦点を置くかという問題

9/22のαギャラリー(名古屋)への搬入に備えて準備作業の合間の夜更かしだった
もうちょっと光害が少なくて、大気の状態がよかったら、と思うがそれは無い物ねだりというものだろう
ところで7日の早朝は寒くて上着を1枚羽織ってもまだ寒かった。涼しさを通り越して一気に寒くなるとは、やはり台風に向かって北西の風が吹き込んだためだろう。ただし寒かったのはこの朝限りで、日が昇ると相変わらずの暑さがやってきた

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180mm、ISO800、f2.8、10秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、池田山山麓
SONY α7RM5 + TAMRON 70-180mm F2.8

2023年9月07日03時45分










西村彗星


果てしなく続く夏の延長戦を闘っているような毎日。もう9月というのに残暑などというような生やさしい暑さではない
SCW気象予報を見ても、この夏は夜になると南の伊勢湾方面から次々と雲が押し寄せてくる。高い湿度を伴った不快な暑さが続いている

西村彗星を求めて8月下旬から4晩目。9月中旬までは夜明け前の東の空に、9月14日ころからは夕方の西の空に見られると考えられている。狭隘な揖斐谷からは東西の低空は望めない。深夜1時に家を出て、車で1時間ほどの距離にある東の空が開けているところまで出ることにする
ところが夜になると低い雲が南から押し寄せ、北極星が見られて赤道儀を据えることができたのはそのうち2晩だけ。あとはむなしく夜明けに撤収を繰り返した


西村彗星は静岡県掛川市の西村栄男氏によって2023年8月13日03時45分ころに発見された約10等級の天体。さらに前日の8月12日03時15分ころに撮影された画像にもこの天体が写っていたという。発見日は正確には2023年8月12.77992日(世界時)(日本時で 13日3時43分)。その後、世界中の観測者によって新発見の彗星であることが確認され、国際天文学連合小惑星センターは、この新彗星を「西村彗星(C/2023 P1 (Nishimura))」として公表した(国立天文台「新彗星を日本の天体捜索者が発見—西村彗星-、2023年8月23日)他を参照


SXD2赤道儀を車に積みなからかろうじて北極星が見られるかどうかという現状に、追尾精度が保証できない。3星導入のうちケフェウス座51番星は諦めて北極星とこぐま座デルタ星の2星で何とか極軸を合わせる。SXD2赤道儀の使用を断念して、AP赤道儀に赤緯軸を延長して1.8㎏のカウンターウエイトでバランスをとって撮影した写真が上図

この日の月齢は17.7。街明かりに加えて強烈な月明かりが頭上から照らした。右には明けの明星(金星)がひときわ明るく輝いている。この時の金星の光度は-4.4等
StellaNavigatorによると撮影時の西村彗星の光度は6.3等、高度は14.520″。光害が酷いこの場所からは、肉眼では見えないはずだ
低空で、透明度も悪く、全天を薄雲が覆っていたが、明るい輝きを放つ金星を目印に西村彗星の位置の見当を付け、雲の切れ間に撮影できることを期待してシャッターを切り続ける。すると上図の写野の上に写っているプレセペ星団のすぐ横に、緑色をした彗星のコマを確認することができた(下の写真)。肉眼では全く判断できず、彗星の尾も識別できなかった。精度高く追尾撮影された複数枚をスタックしなければ、西村彗星の尾を撮影することはとても難しいように思われた

西村彗星は
9月14日から9月23日頃、夕方の超低空で約2.5等まで増光することが期待されているが、日没直後のため空も明るく観察・撮影は厳しいかもしれない
明日以降はずっと天候が悪い予報で、この写真が一期一会となるのだろうか

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70mm、ISO800、f2.8、10秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、赤道儀で恒星追尾撮影、池田山山麓
SONY α7RM5 + TAMRON 70-180mm F2.8

2023年9月03日04時11分