7月の星空 を撮る







猛暑の夏の夜 星空に秋を求めて

湿度の高い、蒸し暑い夏の夜。いつまでたっても気温は下がらない。室温が35℃を下回らない夜に初めてしんどさを感じた。夏の冷房に縁のない生活。あと2週間すればお盆がやってくる。さてお盆になれば涼しくなるのだろうか

外で寝転がった方がまだ涼しいので、月没を待って山へ向かう。α7RM5 + FE 100-400mm GM でM31とM45を撮りながら、α7M4 + FE 14mm F1.8 GM で秋の星空を撮り始めた。寝転がったすぐ横を猪がけたたましく鳴きながら走って行った。どうもあまり安全でもないらしい
次々と流れる雲に街明かりが反射して赤く染まる。近隣の照明の消灯後。雲の合間から星空が顔を出した

写真は東天。ちょうど左が北で樹林の先に北極星が見える。中央にまっすぐ秋の天の川が立ちのぼっている。夏の天の川とちがって、どこか落ち着いた感じがする
天の川のほぼ中央にカシオペヤ座、そのすぐ南(右)にアンドロメダ座大銀河M31が見える。その右上には秋の大四辺形(ペガススの四辺形)が分かる。春の大三角、夏の大三角、冬の大三角に対して秋は三角形を構成する1等星がない。その代わりを務めるのが秋の大四辺形

カシオペヤ座のすぐ下、天の川の中央にペルセウス座の二重星団h-χがわかる。東の空には低い高度にプレヤデス星団が顔を出している。プレヤデス星団の右上には月と見間違うほど明るく木星が輝く。この時の木星の光度は-2.4等

しばらくすると東の山際からぎょしゃ座のカペラが輝き始めた。今年もまたカペラに出会う季節がやってきた

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14mm、ISO1600、f2.0、30秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7M4 + FE 14mm F1.8 GM

2023年7月27日01時44分










α7RM5 + FE 100-400mm GM で アンドロメダ座大銀河(M31) を撮る

北から押し寄せる雲に見え隠れするカシオペヤ座。眼を南へ向けると、いつもとは違って南の方が雲が少ない。濃越国境付近の雲がとれないのは気象予報通りか
月没後にシートに仰向けになり何となく空を見上げる。30分ほど経過すると暗順応が進み夜空がよく見えるようになる。ペガススの四辺形からペガスス座とアンドロメダ座の境界にあたるアルフェラッツを見つける。アルフェラッツの境界と呼ばれる通り古くからこの星の帰属をめぐってペガスス座とアンドロメダ座の双方の論争があった。現在では1929年のIAU総会において決定されたアンドロメダ座α星で定着している
ちなみにアンドロメダ座は紀元後120年頃にトレミー(プトレマイオス)によって制定された星座である

アルフェラッツを手がかりにして、アンドロメダ座大銀河から少し離れた所を見ると、ぼんやりと光の塊が見えるようになる。これがアンドロメダ座大銀河M31である。直視では見えづらい天体だが、少し離れた所からぼーっと見るとくっきりと見えるようになる

M31は銀河系の外にある大きな系外銀河で、地球から約250万光年の距離にある。さんかく座にある銀河M33とともに肉眼で見られる銀河としては、銀河系にもっとも近い系外銀河である

渦巻き銀河M31はM32とM110という2つの伴銀河を伴っている。上の写真でM31の右下にあるのがM32、上にあるのがM110。これらの銀河はやがてM31に吸収されると考えられている

今回は屈折式望遠鏡ではなく通常の望遠ズームレンズを使用した。FE100-400GMは重量があるので、極軸のみを持つポタ赤では追尾は困難。極軸に加えて赤緯軸を持つ2軸タイプの赤道儀を使用したが、天体の導入は大型赤道儀と屈折望遠鏡の方がずっと楽であることには違いない

どちらにしても雲の切れ間のタイミングでの撮影はさすがに厳しいので、次回はもう少し条件のよい時に撮影したい

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400mm、ISO6400、f5.6、1260秒(60秒×21枚)、マニュアルWB、Raw
赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 100-400mmF4.5-5.6 GM OSS

2023年7月27日01時06分










プレアデス星団(M45) 和名は「すばる(昴)」

淀んだ夏の夜。東天をじっと見ていると、昴が姿を見せ始めていることに気づいた
おうし座にあるプレアデス星団、和名は「すばる」。メシエ番号はM45。冬の星座の登場に先駆けて夜空を彩る散開星団

日本では「すばる」が農事読みと深く結びついて親しまれてきたことを、これまでにたびたび触れてきた。丹後国風土記にある浦島伝説と「すばる」のように、古くから欠かせない天体だった。詳しくは「星の民俗誌 覚書」(未完)を参照願いたい

まだ高度が低いため霞がかっていることは止むを得ないが、それでもプレアデス星団の恒星周辺に青い雲のようなものが分かると思う
日本では古来から六連星と呼ばれてきたが、中国では7つの星として認識されてきたことが面白い。清少納言が『枕草子』第229段で「星はすばる」としたことはよく知られている


  二二九 星は すばる。彦星(ひこぼし)。みやう星(じょう)。夕づつ。よばひ星をだになからましかば、まいて。


プレアデス星団は誕生から1億年に満たない若い星の集まりで、高温であるため青白く輝いている。恒星間の青白いくガスは星間ガスが星団の恒星の輝きを反射したもの

もっと高度が高く、条件のよい時に、また出会うこともあるだろう
その時また

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400mm、ISO6400、f5.6、900秒(60秒×15枚)、マニュアルWB、Raw
赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 100-400mmF4.5-5.6 GM OSS

2023年7月27日02時03分

 

枕草子 第229段
『清少納言枕双紙、能因本』(国文学研究資料館 国書データベース より引用)










上弦手前の月

夏の宵は雲に覆われることが多い。揖斐谷で梅雨明けを実感するのは、トンネルの中の路面が乾いてくること。不思議と梅雨明けと同時に綺麗に乾くものだが、今年はいつまでたっても雨の後のような路面が続く。たぶん梅雨は明けてはいないのだろう

気温も湿度も高くてどうしようもない。自宅など昼間の室温が36℃という信じられない温度。こんな生活が、あと何日ぐらい続くのか考えるだけで気が滅入ってくる。これで湿度さえ低ければいいのだけれど

雲間から顔を出す月。日に日に満ちていいる
間もなく上弦

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400mm、ISO200、f5.6、1/200秒、マニュアルWB、Raw
手持ちで撮影、美濃平野部
SONY α7RM3 + FE 100-400mmF4.5-5.6 GM OSS

2023年7月24日19時41分










夏の宵の地球照

日中は暑いものの夕方からの風が心地よい。からっとした暑さの1日だった

午前中に「篠田通弘 星空写真教室 3-ペルセウス座流星群撮影教室-」(座学)を2時間開催し、午後からは希望者を対象に「付録1」として滋賀県へ移動して湿原の植物の撮影実習、さらに岐阜へ戻って夕方から「付録2」として地球照の撮影実習を開催。雲が覆ったため残念ながら予定していた「付録3」の星空撮影実習はできなかったが、場所をかえつつ10時間にわたる座学と実習を開催。あれもこれもと盛りだくさんの教室だった。参加者の皆さん大変お疲れさま

ご希望があれば次の機会も考えたいところ。こんなハードな教室はいつもではないものの、希望される方はあるだろうかと少々自信が無い。参加者のみなさんの経済的な負担にならないように、私は無償ボランティアを基本とすることは変えないつもり。開催の目処が立つようなら(会場貸切費とガイドブック制作の印刷所への支払いができるだけの参加が見込めるようなら)、ご案内させていただく所存。その際はカメラと写真を勉強したいという熱意ある方のご参加をお待ち申しあげる次第

上の写真は雲が押し寄せる直前。施設の照明が明るくて閉口しつつ撮影した1枚
参加された皆さん、いかがだっただろうか

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28mm、ISO100、f2.8、1秒、マニュアルWB、Raw
長秒時NRはon、後処理としてCamera Raw の強化NRを使用して高感度ノイズの低減処理、三脚で固定撮影、美濃平野部
SONY α7M4 + タムロン E28-75 F2.8

2023年7月22日20時30分










光害の街中から、天の川は撮れるか?

0時になっても外気温30℃近くの熱帯夜。ただ不思議なくらいに透明度は高く、気温の低下による結露もない
町からほど近くて光害はいかんともしがたいが、梅雨明け前の新月期に快晴ということになればカメラを構えてみるだけの価値はありそうだ

さてよく聞かれることに「天の川はどこへ行ったら見られるのか」ということがある。これまで各地で写真展を開催させていただいたり、ギャラリートークでお話しする機会があったが、必ずと言っていいほど聞かれることだ。多くの人は写真を指さして「この帯は何ですか?」と尋ね、天の川ですよと答えても信じてもらえない。中には「人間の眼には見えないんでしょ」とか「海外でなければ、日本では天の川が見られるところはないのでしょう」という人もいる
確かに光害が溢れる中では見られる道理がない、ということもその通り。と同時に私たちの眼が夜の明るさに慣れきってしまっているからでもある。私たちは本当の闇を体験できなくなってきている、と思う。夜も暑すぎて、また明るすぎる

上の写真の撮影場所は金生山。ただし山頂ではない
暑さに堪えかねて始終団扇を動かしながら腰を下ろす。ラジオの音だけを友として、街明かりは眼に入れないようにして暗い北天をぼーっと見続ける
およそ1時間近くぼーっと夜空だけを見続けると、天の川がくっきりと目の前に現れた。信じられないことだが、はくちょう座のアルビレオも肉眼で確認できる。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に登場するアルビレオ。わし座の付近を見ると いるか座 も見える

この分なら三脚だけで天の川が撮れるかもしれない。ポータブル赤道儀を用意しなかったことを後悔しつつ、三脚だけの固定撮影で天の川を撮影してみた
思うに人間の眼は明順応にかかる時間は短いのだろうが、暗順応にははるかに時間がかかる。その間に街明かりを見なかったとしても、スマホを見たりして暗順応を妨げる行為をすることで星空が見づらくなる。流星群の観察・撮影などでは暗い場所で、眼が暗順応できるだけの時間をじっくりとかけることが大切だ

以下は7/22(土)の星空写真教室3の予習。といってもこのページを見ている人はいないかもしれない、、、(汗)

三脚による固定撮影では星は日周運動によってどんどん動いていく。それを何とか点像で撮ろうとすると苦労する。夏の大三角では天の赤道に近いわし座のアルタイル付近が最も動きが大きい。ともかくも撮影した写真が上の通り。果たしてどうだろうか。レンズは開放(または開放近く)近くで使用することを前提に、焦点距離から考えて星の動きがそれほど気にならない露光時間を選択。露光時間を決定したら、次にヒストグラムを頼りにISO感度を決める、という順に露光値を決定している
あの光害の中で、しかも三脚だけで撮ったと信じる人は少ないと思う

カメラ内部でダーク減算を行っただけの1枚画像を Adobe Camera Raw の強化NRを使用して高感度ノイズを低減させている。Aiによる力業のノイズ低減処理は不自然のそしりを受けることは覚悟しなければならないが、今後の参考となる良いデータが得られた

ちなみに写真の左が天の北極方向。本来なら天の北極方向を上にするところ画面の都合でヨコ位置に掲載している

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20mm、ISO1000、f2.0、15秒、マニュアルWB、サイトロンジャパン・スターエンハンサー、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、後処理としてCamera Raw の強化NRを使用して高感度ノイズの低減処理、三脚で固定撮影、金生山
SONY α7M4 + FE 20mm F1.8 G

2023年7月18日23時52分










梅雨明けぬ夜の星空

気温はとんでもなく高いものの、湿度が高くて、これでは梅雨が明けないのは当然と納得する。夏を告げるセミの鳴き声も、夜になるとしつこくつきまとうはずの蚊の羽音もなく、ただ暑いのみ
これで晴れなければどうしようもないところだが、奇跡的に海の日を含む三連休にようやく星空が眺められた。しかも新月期と重なり、梅雨まっただ中には珍しく星空が眺められた。この夜は夕涼みができるぐらいの心地よい夜だったが、前夜の7/16の夜はとんでもなく暑くて、0時を過ぎてもまだ30℃近くという夜に閉口した。ただし星空はよかった

上の写真は揖斐谷からみた天の川。右下には土星が顔を出している。もう少しすると木星が東天に輝き始めるかな、と思いながらシートを敷いて横になったら寝てしまった。本当に涼しい夜だった
この涼しさに勝るものはあろうかと、一人合点する。考えてみれば子どもの頃にクーラーやエアコンなんてなかった。小さかったころ電気冷蔵庫もなくて、毎日氷屋さんが切ってくれる氷を木製の冷蔵庫に入れていたことを思い出した。そんなことがあったことも忘れていた
あの頃は汲み上げた井戸水が冷たくて美味しかった。記憶の彼方の話

夜半過ぎに南天に顔を出した みなみのうお座の1等星フォーマルハウト を確かめて、広がり始めた薄雲を横目に撤収した

上の写真はライトフレーム5枚をダークフレーム2枚でダーク減算。その後に加算処理して高感度ノイズの低減をはかったもので、Adobe Camera Raw の強化NRは使用していない
強化NRは高感度で撮影されたデータの高感度ノイズを劇的に低減させるが、ISO感度800程度の画像データでは不自然さが目につく。私の印象ではあるが、赤道儀を使用した星野追尾撮影では複数枚の画像データを加算(平均)処理した方がより自然な画像が得られる

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18mm、ISO800、f2.0、225秒(45秒×5枚)、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、後処理としてダーク減算後に加算処理、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 18mm F1.8 GM

2023年7月17日23時18分










最大光度目前の宵の明星

7月7日は新暦の七夕。といっても梅雨まっただ中のことが多く、本来の七夕は太陰太陽暦(旧暦)の七夕だから、今年は8月22日。まだしばらく先のことだ

さてその7月7日に金星は今期の最大光度を迎える。内合が8月13日で地球と金星は最も接近するが、月に例えるとちょうど新月のような位置に相当するので地球からは金星は見えない。従って内合の前後に最大光度を迎えることなる

また金星は地球の内側を公転する内惑星だから月のように満ち欠けをする。内合前は金星の左側が欠けて、内合後は金星の右側が欠けて見える。7月7日には最大光度は-4.7度に達する。天候がよければ昼間でも見られる明るさだ。といってもどうも天候はよくないらしい

山に囲まれた狭隘な揖斐谷からは明けの明星は何とか見られても、場所を選んでも宵の明星はなかなか見られない。7月4日の夕方、空を覆っていた雲がとれて青空が広がった。撮れるかもしれないと出かけて行った
やや強い西風が吹き、昼の猛暑を吹き払ってくれた。同じ日とは思えない涼しさだ

伊吹山の上には宵の明星が輝き、よく見るとその左には火星が赤く光っていた。24時間稼働する工場の照明は強烈だったが、金星はそれに負けずに輝いていた

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100mm、
ISO3200、f4.5、1秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、三脚で固定撮影、金生山

SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2023年7月3日20時35分




↑ 上の写真から金星と火星付近を切り出し







欠ける金星

内合を目前に控えて左側が欠けているはずの金星を撮ろうと、100-400mmを持ち出した。金星は明るいから赤道儀と望遠鏡を使わずとも三脚固定撮影で撮れるだろう
夜の帳が下り始めた西の空にレンズを向けた。強烈な明るさで輝く金星。やはり内合を前にして金星の左側が欠けている。内合に近づくにつれて金星は三日月のようにどんどん細くなっていくはずだが、撮れるかどうかは天候次第

撮影を始めて1.4X テレコンバーターを忘れたことに気がついた。まあ仕方が無い。それはまた次の機会ということにしよう


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400mm、ISO1600、f8、1/60秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、三脚で固定撮影、金生山
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2023年7月3日20時08分