金生山ライブラリー 第1集

和算と算額
2019年3月31日刊行






日本数学史学会『数学史研究』に紹介されました!(10/18UP)



 図書 『江戸時代の庶民の算術 和算と算額』
  (『金生山ライブラリー』第1集)、金生山明星輪寺発行、平成31年3月31日、58頁、B5判



 近年、和算や算額に関する講演会や展示会が各地でしばしば開催されるようになった。昨年は「会田安明と和算」(最上徳内記念館)、「丹波の算法少女」(ふるさとミュージアム丹後)、「すごいぞ!江戸の数学」(群馬県立歴史博物館)、「とちぎ和算の世界」(佐野市郷土博物館)などが開催され、後者2つでは立派な図録も出版されている。そこにさらに一つ講演録が加わった。平成30年9月28日深川英俊氏による「和算と算額」の講演会が岐阜県の金生山明星輪寺で開催され、その講演録が「金生山ライブラリー」第1集として平成31年3月31日に刊行された。
 大垣にある金生山明星輪寺は以前から算額研究家にはよく知られている。それは保存状態がとてもよいため、文字がよく読み取れ、また図の色も見事に残されているからである。さらにこの算額の特徴には、(1)少女(入門時は13歳)が解いた問題がある、(2)少年(入門時は11歳)が解いた問題がある、(3)12問のうち10問の答が1/nになるように工夫されている(n=1、・・・10)、(4)算額の図の下絵が残されている、などが挙げられる。
 昨年算額研究の第一人者である深川英俊氏が、西美濃生涯学習連携講座としてこの金生山明星輪寺を中心に「和算と算額」の講演をされた。本小冊子はその講演録と篠田通弘氏の論文からなる。前半の深川氏の講演は、一般向けにとてもわかりやすい内容で、しかも時に研究で得られた珍しい結果も含まれている。論文ではないので出典は明らかにされてはいないが、算額が神社仏閣でないところ(壁)に掲げてある例も示され、つぎつぎと興味が尽きない話が飛び出す。深川氏の紹介もあり、金生山明星輪寺の算額は海外でもよく知られ、少なからずの研究者や学生がはるばる訪れたことも写真付きで示されている。その中には物理学者フリーマン・ダイソン博士もみえる。
 後半はうって変わり篠田通弘氏による「和算塾算光堂と明星輪寺奉納算額について」という専門家向けの論文である。和算塾の塾主であった浅野五藤治の子孫の浅野家に残る門人帳などの資料を駆使して、塾主とその門下生について紹介している。また幕末から明治にかけての大垣の和算の状況を資料から浮かび上がらせ、また研究の視座を提示している。論文には資料として、算額の下絵と算額実物の図とが比較して掲載され、興味深い。また河合澤という名の少女などの「神文前書之事」、つまり塾入門の誓約書の現物が写真に収められ、塾入門時の厳しい約束事の実態がよく分かる。大垣の和算については、すでに高木重之氏、小林時造氏などの研究があるが、この篠田通弘氏の論文がそれに加わったことで喜ばしい。
 本冊子には図版が多く、また算額が図版付きで英訳されており、海外に紹介しても見劣りがしない仕上がりである。
 和算や算額の図録などは各地で出版されているようだが、その多くは通常の図書販売ルートにはなく、また情報も少なく、残念ながら多くは埋もれてしまっているのが現状であろう。それらをご存じの方がおられましたら本誌にぜひとも紹介し、多くの研究者の目にとまるようにしていただければと思う次第である。
 なお金生山明星輪寺は中山道の要所の美濃赤坂にあるが、山を登らねばならずアクセスは不便である。しかし、奇岩に囲まれた寺からは絶景を望むことができ、またヒメボタルが美しく舞うことでも近年人気を博している。

 冊子は金生山明星輪寺に直接注文し入手できる。
 振替口座:00850-0-4923
 価格:本体1,500円、送料370円

                                       文責:三浦伸夫




 日本数学史学会編『数学史研究』(通巻233号60〜61頁、2019年)に三浦伸夫先生による図書紹介「図書 『江戸時代の庶民の算術−和算と算額−』」が掲載されました。ここに転載させていただきました。
 三浦伸夫先生(神戸大学名誉教授、放送大学客員教授、科学史,比較科学史,数学史)は現在放送中の放送大学「数学の歴史」を担当されています。その中の1回の講義を和算に当て、金生山明星輪寺奉納算額についても紹介されています。
 以下で2019年度開講の「数学の歴史」についてその概要をご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=ifC3hXNXa_8

 三浦先生には厚くお礼を申し上げます。

                               (転載に際しましての責任は篠田通弘にあります)












 金生山明星輪寺より『和算と算額』が刊行されました。

 明星輪寺には元治二年(1865年)に算光堂塾主浅野五藤治孝光とその門人たちが奉納した算額(岐阜県重要文化財)が残されています。この算額と江戸時代後期に隆盛した和算をテーマとして、深川英俊先生の講演会「江戸時代の庶民の算術 和算と算額」(西美濃生涯学習連携講座)が2018年9月28日午前・午後の2回にわたって開かれました。いずれも第1部として地区センターで講演会が、続く第2部として明星輪寺で算額の見学・解説が催されたものです。
 本書は「金生山ライブラリー第1集」として明星輪寺より刊行されました。深川先生の講演録「江戸時代の庶民の算術 和算と算額」と明星輪寺算額問題の英文に、明星輪寺住職冨田精運氏の創刊の辞、篠田通弘「和算塾算光堂と明星輪寺奉納算額について」を合わせて収録したものです。
 「金生山ライブラリー」の名には金生山の自然と歴史と文化を掘り下げて、継続して紹介していきたいという願いを込めています。皆さんのご理解とご協力をお願いいたします。

 【本書の仕様】  無線綴じ / オンデマンド印刷 / 62ページ / B5 / 表紙(両面カラー マット紙 135kg ) / 本文(両面カラー マット紙 110kg)

 頒価は1冊1500円(+送料370円)。ご希望の方は明星輪寺、または篠田までお問い合わせ下さい。