金華山(330m)
2003年7月20日
長野県小谷村栂池自然園より

7月18日夜に岐阜を車で出発。今年の梅雨明けが遅れているため、なんだか天候が心配。案の定、長野道へ入ったあたりから雨が降り出した。後立山登山の定宿となった白馬村和田野のアルペンロッジ岳都さんへ到着した深夜には本降りの予感。残念ながら19日の登山はあきらめ、20日の1日にかけることとする。19日は時折降る雨の中、遠見尾根下山時にありがたくお世話になっているテレキャビンに乗ってアルプス平の山野草を見たり、姫川源流と親海湿原を見たり。それなりに有意義な時間を過ごすことができた。姫川源流付近のドウカク山なる小山にも登り、これで一つは登った、などと気休めを言いながら20日を迎えた。20日は雲の切れ間ものぞく、まずまずの天気。6時半から動く栂池高原のゴンドラ・イブに乗り、ついでロープウェイの始発に乗る。とんでもない混雑を覚悟したが、思ったよりも人は少ない。やはり3連休の半ばということだけではなく、この不純な天候のせいでもあるようだ。7時21分、ビジターセンターに到着し、一面のガスの中を歩き始める。
天狗原への登山道はぬかるんでいる。相変わらずガスは晴れないが、少しずつ空が明るくなってきた。登山道の両脇には花期が終わって巨大化したミズバショウの群生地や、イワイチョウ(左)、コイワカガミ(右)が一面に咲き乱れ、その数は実に豊富である。雪が多かったせいか、花期が例年よりも少し遅いのかもしれない。眺望はきかなくても、雪解けを待って一斉に咲く花を見ているだけで、来て良かったと思ってしまう。
8時8分、歩き始めて約50分。いつの間にかガスも晴れ、下に雲海を見ることができた(左)。もう天狗原まで近いが、初めての眺望にここで1本。8時21分、再び歩き始めてしばらくすると登山道左に白馬大雪渓が見えることに気づいた。じっと目をこらすと雪渓中央に赤いマーキングが見え、双眼鏡でのぞくとまるで蟻の行列のような登山者が見える。例年よりもはるかに少ない登山者でもこの列では、天候がよかったら大渋滞となることだろう(右)。白馬大雪渓は先だって大規模な土石流が発生し、小屋も一部倒壊し、ルートも変更したという。テレビ報道でしか知らなかったが、海の日に向けて急ピッチの復旧が進められたらしい。岳都さんのご教示によると、「当初は土石流と思われたが、先々週の大雨で大量の雨水が雪渓下に流れ込み、その中で行き場を失った水が雪の薄い部分を突き破り、雪崩となって噴出した現象」だという。このような記録は過去にもないそうで、自然の力を思わざるにはいられない。
登山道を遮る小さな雪田を登り、8時49分、標高2200メートルの天狗原に到着。栂池自然園と同じ湿原だが、栂池とは植物相にかなりの違いがあるようだ。花期を終わろうとしているチングルマとワタスゲが見られ、実にゆったりとした時間を過ごすことができる。自然園のように観光客が次から次へと押しかけてくる場所でないだけに、かえっていいかもしれない。植生保護のため、登山道には木道が敷かれている。
9時34分、乗鞍岳への最後の急登は雪面登りとなった(左)。この斜面は安山岩のゴロゴロした急登となるはずのところが、今年は雪が多くのこり、ロープが張られていた。これを頼りに一気に登る。おかげで高度がどんどん稼げることと、安山岩のゴロゴロ歩きは避けられ、涼しい登りだったが、結構な標高差がありしんどかった。三角点に気づかず通り過ぎ、10時18分、山頂に到着。遠くに小蓮華山が見えるが、その奥にある白馬岳は見え隠れしている(右)。乗鞍岳はトロイデ型の死火山で、粘性の高い溶岩のため溶岩台地となり、岩礫地を形成している。山頂周辺には植生保護のためルートの両側には緑のロープが張られていたが、ここもまた白馬大池山荘や白馬岳から下山する登山者の団体でにぎわいを見せ始めた。
ザックを山頂に置いて、白馬大池を見に行く。行程であと30分ほどだが、今日中に岐阜へ戻らねばならない。今回は見るだけ、である。白馬大池は満々の水をたたえていた。標高2437メートルの山上湖で、例年より多くの雪が湖岸に残っている。溶岩のせき止めによってできた湖と考えられていて、周囲の大量の積雪が湖水源となっている。あの山荘まで行くとビールが飲める、という思いを断ち切って、山頂に戻る。いつの間にか小蓮華山の向こうに白馬岳が顔を出していた(右)。
帰路は往路を戻った。11時16分、途中で三角点を確認(左)。一面に咲くチシマギキョウ(右)などを楽しみながら、ゆっくりと下山した。雪の急斜面を下りて、一息つきながら振り返ると、雪田は下山者と登山者が入り乱れての大渋滞となっていた。いや、早く下りてきてよかった、よかった。天狗原を過ぎたあたりで雨が降り出したが、カッパは着ずに傘をさして下山する。行きよりも登山道に流れる水は増えているようで、やはり日中は雪解けが加速するのだろう、と納得。ぐちゃぐちゃな道は仕方あるまい。13時08分、栂池自然園ビジターセンターに到着。栂池山荘のスモモのソフトクリームを食べて至福の時を味わいながら、帰りのロープウェイへと向かった。

※天狗原は栂池自然園とまた違った湿原で、オススメできる。ここまで足を伸ばすだけでも価値があるというもの。ただし、栂池自然園でもそうだが、私たちの衣服について外来植物が入り込んでいる、ということも知らねばならない。ペットの持ち込みもまた問題になっているのは周知の通り。ちなみに栂池自然園では本来の植生を守るために、ボランティアによる外来植物の抜き取りが行われていることも、訪れる者の多くは知らない。いろいろな人のおかげで楽しい山のひとときを過ごすことできることを、忘れたくはない。