SONY DSC-RX100M5で星空を撮る
-2018年9月 揖斐谷-



 8月に引き続いて9月も不順な天候が続いた。昼間に青空が覗いても、夜には雲が広がり撮影はすぐに撤収という悲しい日が続いた。
 とはいっても何日かは薄雲を避けながら星空が顔を出す夜もあった。夜の晴れ間を狙ってSONYのCyber-shot DSC-RX100M5で撮った星空を紹介したい。

 DSC-RX100M5は現在ではRX100M5AとVersion-upされている。今回使用する機会を得たのはVersion-up前の旧タイプである。
 RX100M5は1.0型、有効画素約2010万画素の積層型Exmor RS(R)CMOSセンサーを搭載。高速AFを実現した高速・高精度なファストハイブリッドAFを特長とするが、星撮影で使えるかどうかは何を置いてもレンズ性能が重要。
 RX100M5のレンズはZEISSの名を冠したVario-Sonnar T*、24-70mm(35mmフルサイズ換算)。開放F値は広角端でF1.8、望遠端でF2.8と非常に明るい。これは期待できそうだ。
 さらにMFアシストが搭載され究極の点光源といえる星にピントを合わせやすい。グリッドライン、電子水準器も備えていて、ブライトモニタリングを使用すると構図の決定が容易い。さらにUSB給電にも対応していて、長時間の使用も可能と、至れり尽くせりの機能。コンパクトな本体は、いつも持ち歩くのにちょうどいい。昼も夜も、とりあえずこれさえあれば撮れる、そんな気にさせてくれる1台である。
 本体が小さいので、連続して長秒時露光を行うと本体はそれなりに熱を持つ。それにともなってアンプノイズも目立ってくるが、外気温が10℃を下回るようになってくると長秒時ノイズリダクションをonにしなくてもさほど気にならない。ただし結露には注意が必要。結露防止ヒーターを巻き付けるにはレンズが小さすぎるので、ポケットに懐炉と一緒に入れて温めておいてから三脚にセットする。撤収時は結露を防ぐためにレジ袋に外の空気と一緒に入れて、室温になじませてから袋から出すようにする、などの工夫が必要。

 さてRX100M5は星撮影に使えるか。
 結論から言うと目から鱗だった。レンズは秀逸でサディタルコマ収差も少ない。1.0型のセンサーサイズはフルサイズはもちろんAPS-Cと比べても小さいので、低輝度下の撮影ではさすがにノイズは乗る。画素ピッチは約2.41µmと小さい。α7M3の画素ピッチは約6µmと十分に余裕があることから見ても、RX100M5の画素ピッチの小ささが分かる。そのため星像の繊細さはフルサイズには及ばないが、それらを差し引いてもよく写る。本格的に星撮影をしようとする時に本機を持ち出すことは少ないかもしれないが、星撮影の可能性のあるシーンで、極限まで軽量化したい場合の選択肢に十分なりうる。





2018年9月6日23時33分撮影
24mm、ISO1600、f1.8、30秒、長秒時ノイズリダクションon、高感度ノイズリダクションoff。
RX100M5。

 ファーストショットとして北天を撮る。中央左に北極星、中央上にカシオペヤ座とその右下にペルセウス座の二重星団が見える。右下には冬の星座、ぎょしゃ座の1等星カペラが顔を出している。実によく写る。
 高感度露光のためノイズは多いが、ノイズにまぎれて微光星を消さないようあえて高感度ノイズリダクションはoffにしている。長秒時ノイズリダクションをoffとすると樹木のシルエットはノイズまみれになり、後処理としてダーク減算が必要となる。ここではonにしているため、ダークノイズは少ない。もう少し外気温が下がってくれると、長秒時ノイズリダクションをoffとすることも選択肢となる。







2018年9月11日21時28分撮影
24mm、ISO1600、f1.8、30秒、長秒時ノイズリダクションon、高感度ノイズリダクションoff、赤道儀使用。
RX100M5。

 天頂に夏の大三角が上った。西へ沈もうとする前のタイミングで夏の銀河を撮る。右下からは雲が上ってきて、赤道儀を使用して複数カット撮影したものの使えるのはこの1枚だけだった。はくちょう座の1等星デネブの上には北アメリカ星雲が赤く光りを放つ。天の川左のアルタイルの上にはいるか座も写っていて、見事な描写だ。この画像の左下の部分が太陽系を含む天の川銀河の中心部分である。






2018年9月18日23時44分撮影
24mm、ISO1600、f1.8、30秒×4枚、長秒時ノイズリダクションoff、高感度ノイズリダクションoff、赤道儀使用。
RX100M5。

 夏の銀河が西へ沈もうとしている。山際と天頂付近には雲が上り初めている。あまり長い時間撮ることはできなさそうだ。
 赤道儀にRX100M5をセットして、連続撮影する。ヘッドライトの明かりなどが写り込んだカットを除いて4枚を加算平均でコンポジット処理する。微光星を消さないように高感度のノイズリダクションをoffにしているため、1枚1枚には高感度ノイズが見られる。4枚を加算平均コンポジット処理することで高感度ノイズを軽減した。






  星は巡り、季節も巡る。夏の銀河を見送りながら過ぎ去る夏を思いながらも、東の夜空には冬の星座たちが登場を始める季節でもある。冬の星座を思い心はときめく。これからの季節、星空に恵まれることを願っている。