2018年8月の星空
−ペルセウス座流星群など、揖斐谷−



 大雨と台風と猛暑の三つ巴だった2018年の夏。星空撮影から振り返ってみると、南から次から次へと押し寄せる高湿度の空気に苦しめられ、澄んだ星空が恋しい毎夜だった。揖斐谷ではいくら夏でも夜間は気温が下がり、長袖の上にウインドブレーカー必須、寝袋も必需品、これがいつものペルセウス座流星群撮影風景。それが今年は暑すぎて、深夜でも半袖。あまりにも暑いからだろう、蚊に刺されることもないという訳が分からない夜が続いた。

 2018年のペルセウス座流星群は月明かりに邪魔されない最高の条件だった。極大予想は8月13日10時と日の出後だったが、11日から14日は全く月がない時期で、晴れさえすれば流星群が撮影できると期待された。

 そこで8月4日、SONY αアカデミー「篠田通弘の写真講座−星撮影講座5−三脚で撮るペルセウス座流星群」、「篠田通弘の写真講座−星撮影講座6−ポータブル赤道儀で撮るペルセウス座流星群」の2講座を各2時間ずつさせていただき、多くの方に受講していただいた。今年の1月にαアカデミーとしてセミナーを担当させていただくようになって以来、変わらず参加してくださる皆さんには心から感謝する他はない。4月こと群は悪天候でダメだったけれど、今度こそは皆さんに流星群撮影に成功していただきたい、その思いからテキスト・プレゼン制作にも力が入った。

 天候に左右されすぎるので、αアカデミーとしては撮影実習を設けることはできない。そこで、揖斐谷で受講者の方に呼びかけて有志による撮影実習を計画した。11日から13日の3晩のうちどこかは晴れるだろう、その日を狙って、と。しかし、結果は残念という他はなかった。天候が悪すぎて、がっかりを通り過ぎて、言葉もないほどだった。

 しかし残念がるには早い。これから秋の流星の季節を迎える。12月のふたご座流星群も好条件。同じく残念だった4月こと座流星群の分も含めて一気に挽回。皆さんには希望を持って、万全の準備で臨まれることを願う。





2018年8月6日23時31分
15mm、ISO3200、f2、20秒、赤道儀使用。
α7M3+Laowa 15mm F2。

 ペルセ群は7月下旬から流れ始めている。この夜帰宅して夜空を見上げると、綺麗な星空が広がっている。この日は0時30分過ぎに月が出る。あと2時間の勝負と、急いで近くの山へ出かける。
 猛暑が続く今年の夏だが、この晩は驚くほど空気が澄んでいた。赤道儀を立てる間にも流れる流星に背中を押される。画像は思わず、おおっ、と叫んだ1枚。東の低い空に雲が少し出始めたが、ペルセ群特有の色鮮やかな流星が流れた。
 放射点近くにはペルセウス座の二重星団、中央下にカシオペヤ座とその右にアンドロメダ銀河。中央上にはくちょう座のデネブと北アメリカ星雲。





2018年8月11日23時37分
15mm、ISO3200、f2、15秒、赤道儀使用。
α7RM2+Laowa 15mm F2。

 ペルセ群極大の夜を翌日に控え撮影。晴れてさえいればかなりの数の流星が流れるはず。しかし雲の切れ間に流れることを期待するしかない状況。空気の比較的透明度は比較的高いのだが、雲が多すぎる。1つぐらいは撮れるだろうと覚悟を決めて赤道儀2台をセット。もう1台にはα7M3に16mm対角線魚眼。
 画像は23時37分の長経路の流星。思わず、あぁっと声を上げるほど見事な流星だったが、流れた瞬間にα7M3のシャッターが切れる音がした。今年最大のペルセ群を逃したことを知った瞬間だった。





2018年8月11日23時42分
16mm、ISO3200、f2.8、30秒、赤道儀使用。
α7RM2+AI AF Fisheye Nikkor 16mm f2.8D。

 夜が更けるにつれ雲量が増え続ける。もうダメかな、明晩に期待して撤収かな、と思った瞬間にT筋の流星が流れた。町明かりが反射して赤くなった雲の隙間にペルセ群。この後はとうとう雲量10に。これが今年のペルセ群の最後の1枚となった。






2018年8月17日20時20分
20mm、ISO400、f2、13秒。
α7M3+FiRIN 20mm F2 FE MF。


 ペルセ群撮影が期待された3晩は終わったけれど、流星にこだわらなければ星空は撮れる。と、希望者を募って撮影実習を企画したけれどやはり雲。最後まで迷われた方も気象予報を見て中止。遠方からの来訪は、よほどの晴れ予報でないと私も躊躇する。
 この夜は旧暦の七夕。所謂、伝統的七夕。西に月が傾き始めたころ、天頂に夏の大三角が上る。本来の七夕の夜はこんな風だったのだ。
 月が沈むまでは雲が多かったが、ソフトフォーカスフィルターをつけたような味わい。月のすぐ側には木星、その左にさそり座。アンタレスが赤く輝く。その上には土星がひときわ明るく輝いている。







2018年8月17日22時28分
20mm、ISO800、f2、60秒×4枚、赤道儀使用。
α7M3+FiRIN 20mm F2 FE MF

月が沈むころ、次第に雲が切れ始めた。これなら撮れるかもしれないと、近くの山へ行く。赤道儀をセットしている間にペルセ群が一筋流れた。明るい流星だった。撮れなかったけれど、最後のペルセ群が見られて幸せだった。
 雲が晴れた空は意外と空気の透明度が高かった。天頂からやや西に傾き始めた夏の大三角。アルタイルに寄り添うように、イルカたちも見えている。








2018年8月18日00時21分
20mm、ISO800、f2、60秒×4枚、赤道儀使用。
α7M3+FiRIN 20mm F2 FE MF


西の空に夏の星座を見送る。南東方向から少しずつ筋雲が流れてきて、雲がやってこないうちに撮影。
 天候に恵まれた実感のない今年の夏だったが、明け方近くには真夏のオリオンとも出会えて「星の巡り」から季節の巡りを感じる夜もあった。こんな夜は野尻抱影を読み返したくなる。






2018年8月18日01時32分
200mm、ISO400、f4、60秒×4枚、赤道儀使用。
D500+Ai nikkor f4 200mm


 筋雲の切れた時間帯にプレアデス星団を撮る。このAi nikkor f4 200mmは私が大学を卒業して教員となった1978年に買ったレンズでちょうど40年前のことだ。Nikon F2フォトミックA 、Ai Nikkor 50mm f/1.4と合わせて給料2か月分以上だった。
 私がともに歩んだカメラ・レンズはほとんど手元に残してある。時折取り出しては使ってみて、年代を感じさせない素性の良さに驚くこともある。このレンズの描写はさすがに当時のもので、現代のカリカリ描写とは違う。設計された当時はまさかデジタルで使われるとは思ってもいなかったことだろう。
 それでもその味わいを懐かしく感じるのは、歳をとったということか。








2013年8月13日
16mm、ISO2000、f2.8、20秒×8枚、赤道儀使用。


 2013年のペルセ群はよかった。極大時刻が日本時間で夜だったことに加えて月もなかった。また極大前後には快晴の日が続いた。
 2013年のペルセ群の思い出は、今も鮮やかに心に刻まれて色あせない。
 これから先このようなペルセ群に恵まれる機会は、2021年、その次が2029年。それまでしばらくのお別れだ。また会える日を願っている。





 猛暑の2018年も一度もエアコンを入れることなく過ぎようとしている。残暑は猛烈で、今日(8/26)の揖斐川町の予想最高気温は38℃だとか。ここまでくると笑うしかない。夜帰宅して室温が35℃にも閉口するが、窓を開け放しても28℃まで下がれば涼しい方。来年はどうなるのだろう。




     クーラーの風が嫌いと笑ってこたえ
          ポケットの硬貨を探るペルセウスの夜



 字余りの駄作で失礼。

                                                                20180828