αで星空を撮る Ver.20170428







 SONY α7RII + Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
 2017年4月28日01時50分~54分撮影。ISO1600、F2、30秒、高感度ノイズリダクション・長秒間ノイズリダクションはともにオフ、8枚画像を加算平均でコンポジット処理、トリミングなし。赤道儀使用。

 GPV気象予報によると1時過ぎには晴れるらしい。まだ時間はあるとのんびりと仕事をしていたら、0時前に雲が切れ始めた。これはいかんと、慌てて準備をして外に出る。4月こと座流星群では2日続けて徹夜の撮影がたたり、風邪を引いて寝込んでしまった。同じ失敗を繰り返さないよう厳寒時に匹敵する重装備。人も機材も保温対策は万全。撮影に夢中になり、気がつけば天文薄明が始まっていた。この夜も結局は徹夜だった。

 5月になろうとする今頃の未明は夏の銀河が天頂付近に上ってくる。翌日にFiRINを返却しなければならないので、この夜はFiRINに加えて55mm/1.8で夏の銀河を撮影することにした。
 画像は中央にはくちょう座の1等星デネブ。夏の銀河が左下から右上へ横切る。

 小学校4年生理科で「デネブ-ベガ-アルタイル」の夏の大三角を学ぶことになっている。僕が大学を卒業して徳山小学校に勤務していた頃は、子どもたちを夜の学校に集めて星空観察をよく行った。そうやって星空の勉強をすることが当たり前だった。今では教科書の写真と、プラネタリウムへの社会見学で済ませてしまう、らしい。だから実際に夏の大三角を観察して学ぶ機会に恵まれた子どもはほんの一握りなのだろう。
 以前北アルプス燕岳に登った時、夜間星空を撮影していたら親子4人が星座早見を手にして山小屋の外へ見学に出てきた。子どもたちにとっては幸せな体験だったに違いない。僕は自宅から数分で撮影場所まで移動できることに感謝しなければならない。コンビニがなくても、スーパーがなくても、今はまだ何も困らない。村に住み続けることができる限り、この星空を撮り続けたい、それがささやかな、しかし贅沢な願いである。

 さて画像に目をやるとまるで宝石を散りばめたたような星たちに圧倒される。
 デネブのすぐ下には散光星雲NGC7000。その形から北アメリカ星雲と呼ばれる。そのすぐ上にはペリカン星雲。これらは赤い色で写し込まれているが、その色は水素が反応して発光するHα線によるもの。肉眼はもちろん、双眼鏡を使っても赤い色を見つけることは難しい。通常のデジタルカメラでも赤く写すことは困難だが、予想以上に赤い発色を放つ星雲を撮ることが出来た。Hα線を捉えることができるカメラは、現行機種では Nikon D810A だけだ。SONYはαの名をカメラに冠するだけに、いつの日かHα線を赤く捉えるフィルターを備えた天体用カメラを発売してくれるのではないか、と密かに期待している。

 上の画像からは見つけにくいが等倍で観察すると網状星雲NGC6990とNGC6992~5がしっかりと写っている。これらは今から数万年前、旧石器時代の頃の超新星爆発の名残。1300光年離れたところから見ているわけだから、今見る光は8世紀初め奈良時代初頭の光ということになる。さらに右側には楕円形に固まってこぎつね座の散開星団NGC6940が見える。100個ほどの星が固まりは9400光年の彼方にある。つまり今見る光は縄文時代草創期の輝きということになる。

 それにしてもα7RIIのセンサーは際だって優れている。昨年秋に試用する機会があり、それが契機となって今では夜の撮影にはなくてはならない、絶対の信頼を置く機材の仲間入りとなった。バッテリーの持ちの改善や明るい広角単焦点レンズの開発など、要望したいことはある。しかし、精細な描写とノイズの少なさが際だっていることは間違いない。星景・星野写真の作例はまだ多いとは言えないが、着実に評価は浸透していくことだろう。
 先日ソニー イメージング プロ サポート から α9 受注開始の案内が届いたが、もし α9 の先に α9R があるとしたら、と考えると心が震える。もっともそれ以上に懐が寒くて震えることだろうが。

 Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA は口径食の少ない上質な写りが得られるレンズ。ヒメボタル撮影では主力レンズといっていい。星撮りでは四隅のサジタルコマ収差がやや目立つ。が、リサイズした上の画像では気にならない程度である。α7RIIとのコンビネーションは良く、星景写真としてはやや画角が狭いことを除けば十分に期待に応えてくれる。一番の利点は軽量である。大きな精度を望めないポタ赤使用するのには十分すぎるほどの軽量といっていい。写りを見ると、もはやこのレンズを使わないという選択肢はない。この夏、たぶん北アルプスへ登る僕のザックにはこのレンズが入っていることだろう。

 4月こと座流星群の画像も合わせて、順次掲載予定。


                                                  (20170429記)