FE 14mm F1.8 GM で 夏の天の川を撮る






SONYから新しい超広角単焦点レンズが発売された。FE 14mm F1.8 GM である。
このレンズはGM(G Master)を冠したEマウント最高峰のレンズ。
焦点距離14mmという超広角レンズで、11群14枚(うち、XAレンズ2枚、非球面レンズ1枚、スーパーEDガラス1枚、EDガラス2枚)という贅沢なレンズ構成にして、重量はわずか460グラム。最短撮影距離が0.25mとかなり寄ることができるレンズだ。
レンズ前面に円形フィルターを装着することはできないが、リアにフィルターホルダーが搭載されていて、シートフィルターを型紙に沿って切り抜いて装着することができる。これは FE 12-24mm F2.8 GM と同様である。
今回はレンズの性格を紹介するため、リアフィルターは使用していない。

ピントリングは軽く、軽量であることと合わせて、2基のDリニアモーターは高速・高精度なAF駆動が期待でき、例えばジンバルに搭載した動画撮影などに威力を発揮するはず。
静止画の、星空撮影を考えた場合はピントリングは滑らかなヘリコイドが望ましいが、星空撮影のためだけにこのレンズを購入する人がどれだけいるかを考えると、それは無理な注文というべきだろう。

簡単に印象を述べると、開放f1.8であってもコマ収差は極めて良好に抑えられている。とりわけ星空撮影の場合は四隅のサジタル方向の収差が補正されていることが何よりも大切であるが、見事と言うほかはない。このレンズの小型軽量を生かして、機材の総重量を抑えたい場合は、小型のポータブル赤道儀を使うことになる。その場合にこのレンズを使う時は、私は迷わず開放で使うだろう。
ただし14mmの超広角レンズといえど過焦点距離を過信せず、試写を繰り返して慎重にピントを合わせたい。画角中央の1点の星を捉えてピントが合ったと早合点せずに、四隅、中央との中間にも目配りをしてピントを確認したい。もちろんピントリングをテープで固定するときには細心の注意を払いたい。

ここには上げていないが、実は月があって雲が多い条件で最初のテストを行った時は、いい加減にピントを合わせたことで四隅で盛大にサジタルコマ収差が発生した。これは、どうなんだろう、、、?と思いながら、次の機会に慎重に合わせることでその心配は杞憂に終わった。このレンズの発表直後は、このレンズが星空撮影で使えるかどうか巷間の評価は二分されていたように思うが、分かれた評価に合点がいった気がする。
このレンズを星空撮影に使う場合、使う側の力量が求められるというのは少し言い過ぎかもしれないが、より慎重に気配りをしてピント合わせた場合、そこから出てくる画像は、ため息しか出てこないほど素晴らしいものだ。
もう少し安ければいいのに、というのは無い物ねだりなのだろう。

私が星空撮影で常用するSONYのEマウントレンズは広角レンズである。
FE 24mm F1.4 GM を嚆矢として、FE 20mm F1.8 G 、FE 12-24mm F2.8 GM 、FE 35mm F1.4 GM 、そして今回の FE 14mm F1.8 GM と続く一連の広角レンズの発表には目を見張るばかりである。いずれ劣らず銘レンズであることは断言できる。
しかし、ひとたび14mmの焦点距離に限定するとなると、しかもポタ赤などの機材を担ぎ上げて星空を撮るという場合には、迷うことなくこのレンズはザックに収まっていることだろう。

かつて他社のレフ機を星空撮影に使っていた頃、20mm F1.8 のレンズのコマ収差がひどくてF2.8に絞って何とか我慢して使っていたことがあった。それとは違うメーカーのレフ機を使う星撮影の知人は、F2.8で撮れるならうらやましいくらいですよ、と話しているくらいだった。それで満足していたことが、大昔のように思えてしまうから不思議だ。
いい時代になったものだ。





画像は夏の天の川。
通常は加算コンポジット処理でノイズを軽減するが、ここでは後処理としてダーク減算だけを行った1枚画像を掲げる。四隅のサジタルコマ収差は皆無で、天の川の描写も見事だ。
天の川の南(左)で強烈な光を放つのは衝を過ぎたばかりの木星、その右下には土星と賑やかな星空だ。

8月は全く撮れなかった夏の夜だったが、ここにきて星空が見えるようになってきた。しかしながら、まだ夏の延長戦を闘っているような気がする。
秋らしい透明度の高い星空にはほど遠く、水蒸気量が多くて、シーイングは「夏の夜空」そのもの。
西の山際には薄い雲も出ていて、残念。
それにしても、ペルセ群の時にこれぐらい晴れてくれればよかったのに、と未だに愚痴が出るのは未練というものだろう。



2021年9月6日22時21分撮影

α7M3 + FE 14mm F1.8 GM、14mm、ISO800、f1.8開放、40秒露光の1枚画像、マニュアルWB、Raw、ソフトフォーカスフィルター不使用、後処理としてダークフレームによりダーク減算処理、赤道儀で恒星追尾撮影